伊藤彰典
Akinori Itoh

東京出身。幼少期の5年間をアメリカで過ごし、大学時より「学生トレーナー」として競技スポーツに関わる。2010年にロルフィングを学びにアメリカ、コロラド州ボルダーに渡る。2012年にロルファー™認定を受け帰国、”Relief Space”を主宰し東京の恵比寿でロルフィング提供を始める。2014年より東京の町田にセッションルームを開き、一般の方々からスポーツ選手、医療従事者などにロルフィングを提供しながらセミナー講師、通訳を務める。2016年3月より神戸の三宮に拠点を移す。

「こんなに楽になるなら、みんなに受けてもらいたい」

私がロルフィングのセッションルームを開いて2ヶ月が経った頃から、ロルフィングの10シリーズを受け始めた主婦のAさん。

息子さんが私のロルフィングを受けていたことがきっかけでした。

10シリーズのセッションが進んでいくにつれ、息子さんの姿勢やからだの様子が日々変わっていく様子を見てAさん自身も体験してみたくなったようで、リリーフスペースにお越し頂きました。

Aさんは長年からだの調子が悪く、腰の張りや足の重だるさ、痛みなどを慢性的に抱えており、様々な整体や治療院に行かれた経験があるようですがどれもこれといった満足を得ていない様子でした。

そんなAさんとの10シリーズが始まったのですが、とある日のセッション中にこのようなやり取りがありました。

私「からだの感じ、どうですか?」

Aさん「なんか、すっごいラクです。今までおんなじように揉まれたり伸ばされたりしても、すぐ戻ってしまっていたのに。ずっと腰が伸びたまんまというか、上半身がとにかくラクなんです。歩くのもなんだか楽しいし。」

私「そうですか!それはよかったです。からだもなんだか自然に動いているように見えますね。」

Aさん「そうなんですよ。こんなに楽になるなら、こういうロルフィングのような施術、年齢や職業に関係なく私の周りのみんなに受けてもらいたいです。本当に。」

このように話していただき、セッションをさせていただいた私自身、くすぐったくなるほどの嬉しい言葉だったのですが、実際にはこれは私自身によるものというよりも、私とクライアントさんとの共同作業であるロルフィングがもたらしてくれたものであると思います。

そして、「みんなにロルフィングを受けてほしい」とAさんに仰っていただいたように、「普段からだを気にしたり労ったりする機会が少ない主婦やサラリーマン、OLなどの方々に受けてもらいたい」ということが、そもそも私がこのロルフィングを始めるきっかけだったということを思い出させてくれました。

このきっかけをはじめ、

「どうして私がロルフィングをしていくようになったのか」

を以下に書かせていただきました。こちらをお読みいただくことで、

「ロルフィングがどのようなことを提供でき、あなたにとってお役に立てるのかどうか」

ということの参考になれば嬉しいです。少し長くなってしまいますが良かったらそのままお付き合いください。

トレーナーとしての限界・・・

元々私は、幼い頃からスポーツや野球を身近に感じ、中学・高校時代と野球をしていたことから、トレーナー・指導者としての将来を当たり前のように考えていました。

そして、愛知県の大学入学と同時に、縁あって硬式野球部の学生トレーナーとして活動を始めたのです。

その野球部は、甲子園出場経験者やプロ野球から注目されていた、いわゆるトップアスリート集団です。

入部当初、私はトレーナー見習いで入部しているので、様々なトレーニングやハイレベルの治療を受けてきた選手たちからしたら物足りない、役に立たない存在であった期間がしばらく続きました。

早く一人前になれたらと、彼らと向き合っては、東京や大阪に出向いて講習会に参加し、プロスポーツのトレーナーたちと交流する日々を送っていました。

その頃の毎日は「苦しかった」という記憶だけしか残っていません。

自分にとっては新しい知識や経験が得られると同時に、すごい方々とばかり会っていたので緊張や焦りが続く日々で、精神的に疲弊が溜まっていました。

ただこのように外で得たことを活用し、選手たちに試行錯誤しながら毎日関わることで、できることを少しずつ増やし、いつの間にかにトレーナーとして信頼していただけるようになり、苦しい日々が一変、毎日が充実していったのです。

そして少し余裕が出てきたからか、突然私は「別の現場を見てみたい」と思うようになり、大学4年時からは他大学の女子ラクロス部のトレーナーを始めることになりました。

これが、私の今後の人生において、一つの転機になったと思います。

そのラクロス部にはトレーナーが過去にいたことがなく、テーピング・アイシング・救急箱といった基本的なケアのハード面、そしてウォームアップ・クールダウン・体力強化など練習メニューといったソフト面も充実しているとは言えませんでした。

何より「怪我やからだの不調への対処・ケア」の方法が整備されていない状態だったのです。

野球部でトレーナーをしていたときには、学内にいるスポーツドクターや近隣の理学療法士の先生に治療をお願いしたり、現場でできるケアのアドバイスをもらえたりと、「怪我やからだの不調」に対して整備された環境がありました。

しかしそれが、ラクロス部にはなかったのです。できることといえば、グラウンドでの簡単なマッサージやストレッチ。ケガとなれば、治療は選手の自宅最寄りにある整骨院などに一任していました。

そのような日々を過ごしている中でふと、ある考えが頭に浮かぶようになってきました。

それは、私がラクロス部員の人たちに対して、

「もっとケガが起きにくいカラダにすることはできないものか」

「 ケガをしてしまっても直接どうにかできないものか…?」

ということでした。

すべて私が対処できれば、整形外科や整骨院に連れていかなくても良いのではないか、と思ったのです。

そうすれば、無駄な時間や沢山のお金を取られることなく選手は日々、プレーをすることができます。

ケガや不調に苦しんでいた選手たちと日々接していた私にとっては、私自身で解決できればということが切実な想いになっていったのです。

ただ実際には、からだの痛みや不調に対してもっと対処できるようになるにはどうしたらいいのだろうか、といった課題がありました。

そのようなことを考え始めていた頃、今の私にとってはかげがえない“ロルフィング”に出会ったのです。

ロルフィングとの出会い

〜実際にラクロス部の人たちに試してみると〜

ある大阪の講習会に参加したときのことでした。

講習会の講師、佐藤博紀さん(ロルファー™、http://athiro.com/)がロルフィングについて話し始めたのですが、もちろん当時トレーナーとして活動していた私ですら、

「ロルフィングって何?」

というような状態でした。

ですが、その時はラクロス部の選手達に何か良い方法はないかと思っていましたので、講師が話している内容に夢中で聞き入っていました。

そして講習会の中にあったデモで私のからだを触っていただいたのです。

そしたらなんと、たった数回のアプローチで自分のからだの感覚が変わっていくのがはっきりと感じられ、「よくわからないけど、とても面白そう」と強く思ったのです。

それから、当時住んでいた愛知県から大阪で活動している先述の講師、佐藤さんを幾会訪ねてはセッションをしてもらい、様々な話を聞かせてもらいました。

そして自分のからだで受けた施術を見よう見まねでラクロスの選手たちに試すことをお願いし、施術を試しては反応を伺い、また試してはと、変化を何度も聞いていきました。

すると、選手たちの症状やからだの状態がみるみる改善していきました。

このようなことを繰り返すにつれて、

「これは自分が悩んでいた治療やケアに対しての答えになるのかもしれない」

という考えが出てくるようになったのです。

それから一年後、先述と同じ大阪の講習会に参加し、日米で活動されているトレーナーの大先輩にお会いした時のことでした…

先輩「これから将来どうするの?」

私「うーん、正直まだ決まってないんですけど、なぜだかロルフィングが引っかかっているんですよねぇ。」

先輩「いいじゃん、ロルフィング。アメリカ、来ちゃいなよ。」

私「・・・そうですね、行きます。」

と、何も悩むことなく将来の道をその場で決断し、一度決めてからの動きは自分自身でも驚いたほどにとても早く、その後すぐに渡米していったのです。

ロルファーになる

〜アメリカで得た新たな価値観〜

ロルファーとして活動するためには、ロルフィングの学校でのカリキュラムを修了する必要があります。

そのクラスの中では、人のからだはとても尊く不思議な存在であり、そして、からだは私たちの日常を支えてくれている大事なパートナーである、ということを教えてもらいました。

私としては当初、技術的な向上やテクニックを求めて渡米していた部分もあったのですが、上記のような観点でクラスが進められていくにつれて、スポーツ選手の怪我を治したい、治療がうまくなりたい、といった考えはどこかに消えていました。

そして、どのように人のからだや「人」自身を包括的にみていくことができるのか、といった考えが自然と生まれていきました。

そこにはスポーツ選手や運動していない一般の方々、といった区別はなく、万国共通の「人」のからだを見ていくという考えがしっかりとあったのです。

そうした新しい価値観を胸に抱きながら、2年半の期間をかけ私はロルファーになりました。

日常的に“安心”を少しでも感じてもらえたら

アメリカに行くまではスポーツ選手やアスリートと関わることが多かった私ですが、日本に帰ってきて以来、最初にご紹介したAさんをはじめ、主婦やサラリーマン、OL、定年を迎えられた高齢者など多くの一般の方々をみるようになってきています。

もちろん、今でもスポーツ選手やパフォーマンスアップを希望される方は来ていますが、職業、年齢問わず様々な方にお越しいただいています。

そんな日々を過ごしていく中で改めて感じるのは、

「アスリートでも主婦でもサラリーマンでも、みんな同じからだを持っていて、ロルフィングはそういったすべての人たちの助けになる」

ということです。

むしろ、からだのケアが必要になるのは一般の方々なのではないかという想いが日々強くなっており、普段ほとんど運動をされないような人でもより良いからだを作るきっかけになればと思い、そういった方々にロルフィングをしています。

私たちのからだにとって、慢性的なからだの痛み、不調、動かしにくさや疲れなどの様々な事が、普段の生活の積み重ねの結果として現れます。

リリーフスペースのロルフィングでは、そういったからだの不調や負担を取り除いていくことに心を寄せつつ、からだとうまくお付き合いしていく方法を一緒に考えていきます。

10シリーズを受けていただいた方々の多くは、肩こりや腰痛、全身のだるさや疲れといった不調がきっかけとしてお越しになるのですが、セッションを重ねていくことで自分のからだの姿勢や無理している部分、動かし方、そしてどうしたらラクでいられるか、ということに少しずつ気づいていかれます。

その過程を経て、痛みが取れたり、不調を感じにくくなったりすることをはじめ、姿勢が無理なく”自然と”整えられ、からだを動かすのが日常的にラクになる、というようなことが起きてくるのです。

ただ痛みや不調を改善するのではなく、私にとってロルフィングは、

「自分がすでに持っている『健康なからだ』を思い出させてくれるきっかけであり、財産としてからだに残るギフト」

だと考えています。

このようなロルフィングを通じて、“安心”が常にそばにある日常が生まれることを願い、リリーフスペースという場を作らせていただきました。